人気の屋根材「ガルバリウム鋼板」とは?メリット・デメリットを解説

人気の屋根材「ガルバリウム鋼板」とは?メリット・デメリットを解説

ここ数十年の間、日本の外壁材や屋根材などの建築資材として利用が増えてきているものとして「ガルバリウム鋼板」があります。
亜鉛、アルミニウム、シリコンを混ぜた合金である「ガルバリウム」にメッキ加工をしたものが「ガルバリウム鋼板」なのですが、この素材は従来の建築資材と比べて軽くて丈夫なものとなっています。
そこでここでは人気素材である「ガルバリウム鋼板」の特徴、メリットやデメリットについて紹介していきたいと思います。

ガルバリウム鋼板について

ガルバリウム鋼板は日本で開発、販売され始めたものではなく、アメリカの「ベスレヘムスチール社」で開発されたものです。
それが輸入販売されるようになって日本で普及し始めていたものですが、日本では「日本製鉄株式会社(NIPPON STEEL)」の登録商標となっています。
そういった経緯があるために、それぞれの建築メーカーがガルバリウム鋼板をベースにした製品には「ガルバリウム鋼板」という名前、名称を使うことができないため、名前を聞いた感じがガルバリウム鋼板に似たもの、連想させるような名前を付けることが多くなっています。

もともと「鋼板」というのは板状の鋼のことを指しています。
鋼は鉄よりも「強い」「丈夫」「加工しやすい」というメリットがあるため、建築資材としても多く使われています。
板のように薄く加工してもメリットがあるために使いやすいものとなっているのですが、鋼という素材ですのでそのままでは「錆び」「腐食」に弱いという特徴があります。

鋼板をそのままの形で屋根材として使用すると、屋根は常に雨に打たれることとなるために常に「雨水」を受けることとなってダメージを受けることになります。
そうならないために、鋼板が錆びたり腐食したりするのを防ぐために表面に加工処理を行います。
鋼板の表面をメッキ加工することで金属塗膜することで鋼板の素材を守るのです。
鋼板に何かしらの表面加工したものを「表面処理鋼板」と呼んでいます。
ガルバリウム鋼板はこの表面処理鋼板の一つが行われており、メッキの割合が、
・アルミニウム55%
・亜鉛43.4%
・シリコン1.6%
となっています。
この成分割合でメッキ加工したものがガルバリウム鋼板である要素となります。

ガルバリウム鋼板の利用メリットとは

広く普及しているガルバリウム鋼板はメリットが多いということが理由となって普及しているといえます。
ここではそういったメリットを順に紹介していきます。

軽量であり、耐震性を高めることができる

近年、「耐震」「耐震補強」といった言葉を聞くことが増えています。
これは屋根が重いとそれだけ地震の際に揺れ幅が大きくなり、軽いほど揺れを抑えることができるという意味も含まれています。
日本で昔から使われている瓦屋根などは瓦がかなり重量があるために、屋根自体が重くなってしまい、地震の際などは屋根が揺れ幅が大きくなって激しく揺れることで建物全体に大きな負担がかかってしまいます。
そのため柱や外壁、屋根などの倒壊などが起こりやすくなると言われていますが、ガルバリウム鋼板のような軽い金属屋根を使うことで屋根を軽量化できるというメリットがあるのです。
ガルバリウム鋼板の屋根材の重さは、スレート屋根の5分の1、瓦屋根の10分の1ほどの重さとされており、耐震性能を高めるために瓦屋根などの重い屋根材から金属屋根に交換するということも多くなっています。
この「軽量」であるというのはガルバリウム鋼板の大きなメリットと言えます。

ガルバリウム鋼板は金属屋根だが錆びや腐食に強い

これもガルバリウム鋼板が重宝されている大きな理由なのですが、「錆び」「腐食」に強いということがあります。
元来、金属屋根は錆びや腐食には弱いという特徴があったのですが、ガルバリウム鋼板は「メッキ鋼板」であり、表面をメッキ加工されていることがその弱点を防いでいます。
ガルバリウム鋼板の表面には亜鉛43.4%、アルミニウム55%、シリコン1.6%の合金がメッキ加工されています。
アルミニウムはステンレスなどと同様に空気中で酸化被膜を作り出します。
この酸化被膜は金属が酸化反応を起こした際に金属の表面に形成される膜のことであり、この膜が錆びの発生や腐食を防いでくれます。
また、メッキに含まれている亜鉛は「犠牲防食機能」があります。
犠牲防食機能とはもし表面のメッキが剥げて中の鉄や鋼が露出してしまったとしても亜鉛が優先して腐食されることで中の鉄や鋼を守るという機能です。
昔、錆びにくい屋根材としてトタン屋根が使われていましたが、こういった理由によってガルバリウム鋼板はトタン屋根の4倍錆びにくいとされています。

熱反射性に優れていて室内の温度上昇を防ぐことができる

ガルバリウム鋼板はメッキ成分であるアルミニウムの容積比が高くなっているという特徴があり、ほかの一般的なメッキ鋼板よりも高い熱反射性があるとされています。
屋根は太陽光を常に受ける位置にあるため、その影響で屋根材が高温になりやすくなります。
屋根材が高温になることで、屋根の内部、室内の温度も上がりやすくなるのですが、ガルバリウム鋼板は屋根の表面温度が上がるのを抑制してくれるために、室内の温度上昇についても防ぐことができるのです。

汚れにくく、防カビ性、防汚性が高い

金属屋根であるガルバリウム鋼板は屋根材自体が雨水を吸収することがありません。
屋根材が雨水を吸収しないので、カビや錆びが発生することが少ない屋根材と言えます。
スレート屋根やモルタル外壁などは、スレートやモルタルが水分を吸収するという特性があるため劣化してくると塗膜が薄くなりコケ、カビなどが発生しやすくなります。
しかしガルバリウム鋼板は水分を吸収しないため、コケ、カビなどが発生しにくく、汚れにくいというメリットがあるのです。
表面が汚れにくいために、熱の反射性などが維持しやすくなるというメリットがあります。
こうした鋼板は表面が汚れていると熱の反射性が低下するということがあるのですが、そういったことを防ぐ効果があるのです。

耐久性が高い、ひび割れしにくい、破損しにくい

セメント系、モルタル系の建材は経年劣化などの理由によって「ひび割れ」が起こりやすいという特徴があります。
地震や衝撃、経年劣化によってひび割れが起こると、そのひび割れた場所から雨水が浸入したり、内部の木材の部分などのほかの部分もダメにしてしまうということが起きます。
ガルバリウム鋼板は金属製であるためにはそういった心配がないというメリットがあります。
また、屋根材や外壁材にとって問題となるものの一つに「凍害」があります。
これは屋根材や外壁材といった建材が水分を吸収し、その水分が内部で凍結することで膨張して建材を破損させてしまうという被害です。
ガルバリウム鋼板は金属製ですので、凍害にも強いというメリットがあります。

ガルバリウム鋼板のデメリット、使用する際の注意点とは

いろいろと利用メリットの多いガルバリウム鋼板ですが、実際に利用する際にはいくつかのデメリットや注意点もあります。
ここではそれらのデメリットや注意点について順に紹介していきます。

導入する時の合計費用は高くなる場合がある

ガルバリウム鋼板の屋根はスレート屋根など他の建材よりも価格が高いために導入コストが高くなる傾向があります。
しかし一般的には、ガルバリウム鋼板のほうがスレート屋根などよりも耐用年数が高いためにメンテナンスの頻度が少なくなり、維持コストは低くなりますので、それらを長期的に考えれば全体的なコストはむしろ安くなるということもあります。
このように長期的な目で見ればコストパフォーマンスが高いガルバリウム鋼板ですが、「導入時のコスト」という点のみで考えると高くなってしまうことには注意が必要です。

傷には弱い

ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、表面もメッキ加工されているために傷つきにくいという特徴があります。
ただ、表面がメッキ加工されているということは、その表面に傷がついてしまうとメッキが剥がれてしまうということがあります。
表面のどこかの部分に傷がつくとそこから水分が浸入したりして「錆び」の原因となってしまいます。
特にガルバリウム鋼板を屋根材として使用している場合は台風など強風が吹いている時に飛来物があって、それが当たってしまうことが原因で傷がついてしまうことがあります。
大きな台風の過ぎた後などはガルバリウム鋼板の表面に傷がついていないかどうかを確認しておくと安心です。
発見が早ければ、傷がついている部分だけ補修することで解決する場合があります。
傷が小さければその部分を塗装することで傷を塞げるからです。

へこみにも弱い

ガルバリウム鋼板は瓦屋根などとは違って薄い金属製の建材ですので、単純な衝撃によってへこんでしまうという特徴があります。
一度大きくへこんでしまうと元の形状に戻すのが難しいという弱点があるのです。
少しへこんだくらいでは機能には問題はありませんが、見た目が悪くなってしまいます。
また、大きなへこみができるとそこから屋根材自体が歪んでしまう、傷がつきやすくなってしまうということもあるので注意が必要です。

断熱性は高くない

メリットの部分として「熱反射性が高い」ということを挙げましたが、やはりガルバリウム鋼板は金属屋根ということもあって、「熱伝導率は高い」という特徴もあります。
ガルバリウム鋼板自体が高温になってしまうと断熱性の低さから建物自体が暑くなってしまうという可能性はあります。
それを防ぐためには、ガルバリウム鋼板に断熱材を張り付けてあるような製品を使うという方法があります。
こうした製品を使用することで断熱性を高めることができるでしょう。

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まとめ
ガルバリウム鋼板は屋根材や外壁材として広く普及してきている建材です。
「軽い」「耐久性が高い」「耐用年数が長い」といったメリットも多く、耐震補強工事にも利用されています。
最近ではこのガルバリウム鋼板をさらに進化させた「エスジーエル鋼板」も開発され、普及し始めていますのでガルバリウム鋼板と合わせて注目されています。