自然石粒付きの金属屋根「ジンカリウム鋼板」とは?メリット・デメリットを解説

自然石粒付きの金属屋根「ジンカリウム鋼板」とは?メリット・デメリットを解説

ジンカリウム鋼板」と「ガルバリウム鋼板」との違いがわからないという声を聞くことがあります。
どちらも優秀な屋根材として使われる建材ですが、この2つはどう違うのでしょうか。
ここではジンカリウム鋼板とはどういったものなのか、メリットやデメリットにはどういったものがあるのかということについて紹介していきたいと思います。

ジンカリウム鋼板は定義がややこしいものでもある

ジンカリウム鋼板自体は「アルミ55.0%・亜鉛43.5%・シリコン1.5%でメッキされた鋼板」のことを指すとされているのですが、それにもかかわらず定義がややこしいといわれることもあります。
ここではその理由を順に見ていきます。

ガルバリウム鋼板との違い

日本では屋根材や外壁材として広く普及している「ガルバリウム鋼板」ですが、実はそのガルバリウム鋼板とジンカリウム鋼板との違いもあいまいとされることがあります。
成分を見ていくと、
ガルバリウム鋼板・・・アルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%でメッキされた鋼板
ジンカリウム鋼板・・・アルミニウム55%・亜鉛43.5%・シリコン1.5%でメッキされた鋼板
となっており、亜鉛とシリコンの配合がたった0.1%違うだけのものとなっています。
つまりほとんどが同じ素材なのです。
にもかかわらず名称が違っているのは、商標登録している会社が違うためです。

・「ガルバリウム鋼板」・・・日本の「新日鉄住金」社の登録商標
・「Galvalume®=(ガルバリウム)」・・・アメリカの「BIEC International」社の登録商標
・「ZINCALUME®=(ジンカリウム)」・・・オーストラリアの「BlueScope」社の登録商標
となっています。

自然石粒の有無について呼び方が違う場合も

商標登録している会社が違うために呼ばれ方が違うジンカリウム鋼板ですが、日本ではさらに別の事情で複雑になっている理由があります。
それは「自然石粒の有無」についてです。

日本では基材となっているガルバリウム鋼板、ジンカリウム鋼板の表面に自然石粒をコーティングしたものを「ストーンチップ鋼板」「石粒付き鋼板」「自然石粒付き鋼板」「自然石粒付き化粧鋼板」などと呼ぶ場合があります。
このように呼ばれ方があいまいになっていることもジンカリウム鋼板の特徴と言えるかもしれません。

ジンカリウム(自然石粒付き)鋼板屋根のメリットについて

ここでは自然石粒付きのジンカリウム鋼板のメリットについて順に紹介していきます。

耐用年数が長い

ガルバリウム鋼板も耐用年数が長いことで有名ですがそれでも15~20年ほどです。
それに対して自然石粒で表面をコーティングしたジンカリウム鋼板は紫外線、錆、傷に強いという特徴があり、30年以上の耐用年数があるとされています。
これは他の一般的な屋根材と比べても圧倒的な長さのものとなっており、製品によってはメーカーが30年保証をつけているということもあります。
このような耐用年数の長さはジンカリウム鋼板の大きなメリットだと言えるでしょう。

塗装メンテナンスが必要ない

ジンカリウム鋼板の表面をコーティングしている石粒は高温で焼かれており、釉薬瓦と同様にガラス質に変化した表面となっています。
そのために色あせしてくることがなく、塗装メンテナンスをする必要もありません。
長くそのままの状態を維持できるという強みがあるのです。

高い断熱効果

金属屋根のデメリットとして熱を伝えやすい、伝導率が高いということがあります。
そのため屋根が熱くなると室内の温度も上がりやすくなるというデメリットがあるのですが、自然石粒付きジンカリウム鋼板の表面には石粒がコーティングされているために熱が伝わりにくく、高い断熱性があるという特徴があります。
この効果によって室内の温度上昇を防ぐことが可能となります。

軽量のために耐震性も高い

ジンカリウム鋼板は金属屋根であるため、瓦屋根、スレート屋根よりもはるかに軽量となっています。
そのため建物や柱、外壁などにかかる負担が小さくなり、耐震性にも優れているといえます。
屋根材を葺き替える際、カバー工法を行う際にも使いやすいものとなっています。

防火性、防音性が高い

金属屋根で石粒がコーティングされている素材のジンカリウム鋼板は不燃性の素材のために防火性が高いという特徴があります。
ただ、一般的な金属屋根は雨音などが響くという弱点があるのですが、表面に石粒がコーティングされていると雨粒をいろいろな方向に拡散する効果があるために音が出る原因となる共鳴を減少させることができます。
そのため、雨音が響いてうるさいということを大幅に減らすことができるのです。

ジンカリウム(自然石粒付き)鋼板屋根のデメリットについて

軽量で耐用年数が長いなどのメリットが多いジンカリウム鋼板ですが、いくつかのデメリットや注意点があります。
ここではそれらの注意点を紹介していきます。

表面にコーティングしている石粒が剥がれる

これは自然石粒付きのジンカリウム鋼板ならではと言えるデメリットかもしれません。
表面にはコーティングされた石粒があるのですが、これはどんなことをしても取れないというものではなく、外部からの衝撃などによって取れる、剥がれることがあります。
特に屋根材として設置施工する際や、メンテナンス時などに剥がれ落ちることが多くなっています。
石粒が剥がれ落ちてしまうとそれだけ機能が低下することにもなりますし、剥がれた石粒が雨樋、集水器などに溜まってしまうと詰まる原因にもなります。
剥がれ落ちた石粒が回収できていれば、再度鋼板に石粒を吹き付けるようなメンテナンスキットもあるのですが、剥がれた石粒は雨や風によって飛散したり流れていったりすることも多いのですべてを回収するのは難しいという現実問題もあります。
このような「表面の石粒が剥がれる」というのは自然石粒付きジンカリウム鋼板ならではのデメリットと言えるでしょう。

価格が少し高め

自然石粒付きジンカリウム鋼板は海外製のものが多く、実際に利用する際には輸入して使用することが多くなっています。
海外製を輸入して使用する際は値段が高くなりがちで、コストが高くなるというデメリットがあります。
また、こうした輸入屋根材については扱っていないという業者もあるため、必ず利用できるとは限らないという弱点もあります。
自然石粒付きジンカリウム鋼板を使用したいという場合には事前に扱っている業者かどうかを確
認しておきましょう。

断熱材一体型のガルバリウム鋼板よりは断熱性は劣る

自然石粒付きジンカリウム鋼板の場合は表面の石粒が断熱性を高める効果があるために断熱材と一体になった製品がありません。
そのために断熱性だけを考えるのであれば、断熱材一体型ガルバリウム鋼板よりも劣るということがあります。
どうしても断熱性を高めたいという場合には、断熱材を一緒にして施工してもらうという方法があります。

ジンカリウム(自然石粒付き)鋼板を扱っているメーカーは

ここでは自然石粒付きジンカリウム鋼板を扱っているメーカーと代表的な製品を紹介していきます。

ディートレーディング

アメリカのカリフォルニアで「ディートレーディング社」が販売しているのが「ディーズルーフィング」です。
製品の種類も多いのですが、どれも軽量で耐震性能に優れており、火災や暴風にも耐えうる耐久性の高さが魅力となっています。
人気の製品シリーズは以下のようなラインナップです。
ディプロマットスター・・・シンプルなデザインでスタイリッシュさがポイント。屋根材としてだけでなく、外壁としても使用されることが多い。
エコグラーニ・・・デコボコとした形状をしているのが特徴的な製品。個性的なデザイン
ローマン・・・波型の瓦のようにデザインされた製品。日本風の建物にも合わせやすい
クラシックタイル・・・洋風瓦のようなデザインなので洋風の建物に合わせやすい

山田工芸はディプロマットスターの施工経験が豊富です。ディプロマットスターをご検討の際は是非施工業者のお声掛け宜しくお願いします。

▷ディプロマットスターとはどのような屋根材?

▷エコグラーニとはどのような屋根材?

リクシル

リクシルが扱っているのは「T・ルーフ」です。
高級感、重厚感がありながら軽量で扱いやすいという特徴があります。
また、製品によって和風の建物から洋風の建物まで合わせやすいのもメリットです。
こちらの製品には以下のようなものがあります。
・クラシック・・・瓦風のデザインの製品
・ヴェルウッド・・・重厚感のある落ち着いた感じの製品
・モダン・・・デコボコの形状で個性的なデザインの製品

伊藤忠建材

伊藤忠建材が輸入販売をしているのはストーンチップ鋼板屋根材「スカイメタルルーフ」です。
表面に使用している石粒はイタリア北部で採取した玄武岩となっており、こだわりの製品となっています。
こちらの製品には以下のようなものがあります。
・スレート・・・天然スレートのような上品さを持つ製品
・ウッド・・・ナチュラルな木目調の製品
・フラット・・・シンプルなデザインでどんな建物にも合わせやすい製品

ここで紹介したメーカーや製品のほかにも自然石粒付きジンカリウム鋼板はあるのですが、輸入製品となることが多いためにすべての業者で扱っているわけではありません。
好みの製品がある場合は、その製品を扱っている業者を探す必要があるといえます。

まとめ
自然石粒付きジンカリウム鋼板は「軽量」「断熱性、防火性、防音性に優れている」「耐用年数が長い」といったメリットがある屋根材です。
ただ、日本ではまだまだ完全に普及しているとは言えず、輸入製品が多いために扱っている業者が少ないというデメリットもあります。
利用したい場合はその業者が自然石粒付きジンカリウム鋼板を取り扱っているかどうかを事前に確認しておきましょう。