屋根の軽量化は耐震性に効果がある?耐震リフォームについて解説

屋根の軽量化は耐震性に効果がある?耐震リフォームについて解説

近年よく聞く言葉に「耐震性」耐震リフォーム」というものがあります。
これは地震に備えて建物の耐震性を高めるというものですが、これに「屋根の軽量化」が大きく関係していると言われているのです。
そこでここでは屋根の軽量化と耐震性の関係、耐震リフォームについて紹介していきたいと思います。

屋根の重さと耐震性の関係とは

屋根の耐震工事というと主に「屋根の軽量化」が行われることが多くなっています。
ではなぜ屋根を軽量化することが耐震性を高めることになるのでしょうか。
建物の重さは柱、壁、基礎部分によって支えられています。
そのため上にある屋根が重いとそういった部分に負担が多くかかることとなります。

地震があった際には屋根部分が大きく揺れることとなります。
基本的には動く部分が重いほど大きな力がかかることとなりますし、屋根が重いほど屋根の遠心力も大きくなるために揺れ幅が大きくなっていくこととなります。
こうして柱や基礎部分に大きな負担がかかることとなるのです。
こういった理由で屋根を軽くすることによって柱や基礎部分にかかる負担を減らすことができるのです。

屋根は軽くすれば良いというわけではない

基本的には屋根を軽量化することによって耐震性を高めることが期待できるのですが、単純に「屋根を軽くするだけで必ず耐震性が高まるというわけではありません。
あくまでも重要なのは「建物が倒壊しない必要耐力」「建物自体の保有耐力」「屋根の重さ」とのバランスなのです。
この「必要耐力」と「保有する耐力」については「耐震診断」を行うことによって数値化して確認できます。
例えば屋根を軽量化することで地震が起きた際の建物に対する水平方向に動く力を減少させることが可能となります。
これは建物の「必要耐力」を減らすということになるのです。
この建物の「必要耐力」よりも「保有する耐力」のほうが高い場合は地震によって建物が倒壊してしまうという可能性が低いということになります。
このように屋根を軽くするだけで良いというのではなく、建物を総合的なバランスで見ていくことが重要なのです。

屋根の重さと耐震性については耐震診断がおすすめ

現在の家が瓦屋根のような重い屋根の場合は金属屋根などの軽い屋根にすることで耐震性を高めることは期待できますが、現在の耐震基準を満たしているかどうか、必要耐力や保有体力とのバランスは不明なことが多くあります。
そういった耐震性、住宅のバランスを診断することができるのが耐震診断です。
耐震診断をすることで建物の耐震性能がわかるだけでなく、性能を向上させるために必要な補修、工事、メンテナンスなどをはっきりさせることができます。
住宅がどの程度の耐震性能を持っているのか、どういった耐震補強が必要となるのかが把握できるのが耐震診断なのです。

やはり屋根は軽いほうが耐震性能は高いことが多い

耐震性能が注目されてきたのは大きな地震が起こった際です。
耐震基準の目安とされているのは建築基準法で定められている「耐震等級」であり、1~3の3段階の等級で表示されています。
この耐震基準を満たしている一般住宅の割合は熊本大地震が起きる前の段階で全国平均が82%あったことに対して熊本では76%しかなかったことがわかっています。
こうしたことが熊本大震災の時に倒壊した住宅が多かったことに関係していると言えるでしょう。

こうした耐震性能、耐震等級を考える際に重要となるのが屋根の重さなのです。
屋根の重さの影響が強く出たのが「1995年の阪神淡路大地震」と「2004年の新潟県中越地震」だと言われています。
建物の倒壊が原因となっている窒息や圧死の犠牲者は神戸が8割以上」だったのに対して新潟では2割」だったとされています。
これはもともと豪雪地帯だった新潟では屋根が軽量化されていることが多く、それが住宅の倒壊が少なかったことに影響しているとされているのです。
神戸では雪が降ることは少なく、昔ながらの瓦屋根の家が多かったため「重い屋根」が多かったのです。

屋根材を金属屋根などに変更して軽量化することのメリットとは

屋根材を軽量化する際にはガルバリウム鋼板などの金属屋根が多く使われています。
ここでは屋根材を金属屋根に変更する際のメリットを紹介していきます。

高い断熱性

ガルバリウム鋼板などの金属屋根は高い「防音性」「断熱性」を持っています。
そのため、大雨の時でも雨音を吸収してくれるので比較的静かです。
また、遮熱フッ素コーティングされているために強い太陽光を受けてもその熱を屋内に通すこと
なく防いでくれます。
こうして高温、騒音から家を守ってくれるのが金属屋根なのです。

軽量化で耐震性を大幅に強化できる

金属屋根は屋根材の中でも特に軽量であり、瓦屋根の5分の1~10分の1ほどの重さです。
そのため大幅に屋根を軽量化することができ、建物にかかる負担を減らすことができます。
こうして地震の際に建物が揺れる幅を小さくすることができるのです。

強風や火事にも強い

「屋根が軽いと強風の時に不安」ということを考える人がいますが、金属屋根を施工する際には強風による圧、巻き上げ風力などに対しても対応できる固定がされています。
そのため強風にもしっかりと対応できるようになっています。
また、ガルバリウム鋼板は法定不燃物を使用して作られています。
耐火構造屋根としても認可されている屋根材ですので、火災にも強い屋根材となっているのです。

メンテナンス費用面で安心

金属屋根は設置する際に費用が高額になるという特徴はありますが、その分耐用年数が高く、メンテナンスをする頻度はかなり少なくなります。
そのため、メンテナンス費用をかなり削減することができるのです。
また、金属屋根にして軽量化することによって施工の際に下地構造材を削減することができるためここでもコストを抑えることが可能となっています。

雪に強いので雪国でも安心である

屋根といえばやはり雪国での「」が不安ということがあります。
北海道や日本海側では大雪が降ると屋根にかかる負担はかなり大きなものとなります。
しかしガルバリウム鋼板は施工断面が段葺きとなっているため、雪が降り積もってもその段差で切れる仕様となっています。
そうして自然と雪が滑り落ちるようになっているのです。
また、金属屋根の表面はフッ素加工がされており、雪が滑りやすいようになっています。
さらに下地に断熱材を充填することで断熱補強をすることができるようになっており、豪雪地帯でも使いやすい屋根材と言えます。

屋根材の落下事故を防ぐことができる

地震が起きた際には建物が倒壊するという恐れだけでなく、屋根材が落下するという危険性もあります。
特に屋根材が瓦屋根だった場合は重量があるために落下した場合は非常に危険性が高くなりま
す。
また、落下すると割れてしまって破片が飛び散ることも危険性を高めます。
ケガをする可能性、周辺の物が破損する可能性も高くなると言えます。
金属屋根などの場合は落下する危険性を低下させるだけでなく、落下した場合でも軽量のために被害を抑えることができるようになっています。

耐震リフォームを行う際の注意点とは

屋根の軽量化を中心とした耐震リフォームは住宅の耐震性能を向上させる効果が期待できるのですが、行う際にはいくつかの注意点もあります。
ここではそういった注意点について順に紹介していきます。

耐震・制震・免震の違いを理解しておく

住宅、建物の地震対策には大きく分けると3つの方法があります。
どの方法をとるのが効果的なのかについては内容を理解した上で業者と相談するのが良いのかもしれません。

・「耐震」とは
「耐震」は家の柱、壁、梁などを補強することで地震の際の揺れに備える対策を指しています。
大きな地震が来た時に建物が揺れによって倒壊しないことを目的とした方法だと言えます。
ただ、この方法は建物は地面と設置し、強く固定されている状態となりますので、地面が揺れた際にはその力がそのまま建物に伝わってしまうというデメリットもあります。

・「制震」とは
「制震」とは「ダンパー」と呼ばれる道具を柱、梁、基礎部分などに設置することで地震の際の揺れの力を吸収する方法です。
地震が起きた際には揺れることにはなりますが、揺れ幅を抑えて柱などにかかる負担を減らすことが可能となっています。

・「免震」とは
「免振」は建物と地面との間に免震装置を設置するという方法です。
建物と地面とを直接設置させないことによって地震の揺れが建物に伝わりにくくするという方法となっています。

屋根のリフォームと合わせて建物全体で耐震リフォームを考える

屋根を軽量化することによって建物の耐震性を高めることはできますが、上記のような建物に対しての補強も合わせて考える必要があります。
地震が起きた際には屋根は大きく揺れて遠心力が発生することとなります。
この際、人間の体で考えると重い荷物を振り回したとしても頑強な体の人であればそれほど負担に感じないでしょう。
しかし、体が弱い人の場合は荷物が軽かったとしても大きな負担に感じるかもしれません。

このように「荷物を軽くする」つまり「屋根を軽くする」だけでは耐震リフォームが十分とは言えず、「体を強くする」つまり「建物の柱や基礎部分を補強する」ということが重要となるのです。

まとめ
耐震性を高めるためには「屋根を軽量化する」ということが重要となってきます。
特に昔ながらの瓦屋根などは重量があるため、これを軽い金属屋根などに変えることで大幅な軽量化が期待できます。
ただ、屋根を軽量化するだけではなく、耐震リフォームを行う際には耐震診断を行うことで建物全体を補強する、バランスよく整えるということが重要だと言えるでしょう。

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