屋根の「ケラバ」「破風板」「軒先」とは?役割について解説

屋根の「ケラバ」「破風板」「軒先」とは?役割について解説

屋根にはさまざまな部位があり、それぞれに名称があって役割を果たしています。
ここではそれらの中でも「ケラバ」「破風板」「軒先」などを中心に役割について紹介していきたいと思います。

ケラバについて

ケラバとは屋根の妻側の端の部分を意味する建築用語となっています。
ここには色々な役割がありますので、その役割とメンテナンス方法について紹介していきます。

ケラバの概要とは

屋根には端部分に「」があります。
これは雨樋が設置されている部分の屋根の先端のことで、この部分を「」「軒先」と呼んでいます。
ケラバは軒先のように雨樋がある側ではなく、妻側の屋根の端部分を指しています。
雨樋が無い方の屋根の先端部分というのがイメージしやすいかもしれません。
妻側の端部分を「ケラバ」と呼ぶのは、この部位の形状が昆虫(オケラ)の羽根に似ているということが由来となっており、ケラバを感じで書くと「螻蛄羽」となります。

ケラバの果たしている役割とは

ケラバの果たしている役割として「日当たりの調整」というものがあります。
夏は日差しが厳しいため、外壁や窓ガラスに直接日が当たり部屋の内部が高温になるということがあります。
ケラバは屋根から少し突き出している形状をしているため、日除けの「ひさし」の役割を果たすことができます。
ケラバがあることによって外壁や窓ガラスを太陽光、紫外線から守ることができます。
しかし冬場は太陽の日射角度が低い位置になるため、ケラバがあったとしても日は当たることとなります。
このように夏場の暑い時期は太陽光を防ぎ、冬場は太陽光を当てることができるのがケラバなのです。
また、こうして外壁に太陽光を直接当たることを防ぐことによって外壁が紫外線によって劣化してしまうのを防ぐこともできます。

さらにケラバは外壁の上側に屋根から突き出た形にあるため、雨風が強い時でも屋根からの水切りをする効果が期待できます。
これによって雨水が風で吹き込んでくることも防ぐことが可能となります。

ケラバのメンテナンス方法とは

ケラバをどのようにメンテナンスしていくかについてはその種類にもよります。
ケラバと水切り金具が一緒になっているタイプの場合は10年ほどはメンテナンスの必要がないとされています。
スレート屋根のケラバについては、一度屋根を外さないとケラバの様子がわからないため、屋根を定期的に点検する必要があります。
瓦屋根についてはケラバを目で見ることができます。
ケラバの部分の瓦がズレている、浮いているといった症状が出てきている場合は土台を補強するといった工事が必要となってきます。
自分で見て判断するのではなく、専門業者に判断してもらう方が安全だと言えます。

破風板について

破風板

破風板はケラバに隣接に設置されている板のことを指しています。
ケラバよりも屋根の外側に設置されており、目立つ位置にあることがわかります。

破風板の概要とは

「破風」とは風を破るという字を書きます。
その名前の通り雨風を防いで屋根が飛ばされてしまうことを防止する効果があります。
この破風は屋根の妻側の側面の壁を指しているのですが、その破風を囲み込むように設置されている板が破風板です。

破風板の役割とは

破風板はその名前の通りに「風を除ける」「風から建物を守る」という役割があります。
普通に雨が降っているだけであれば屋根だけで防ぐことができるのですが、風をともなって激しい雨が吹いた場合は雨風が建物の中に入り込んでしまうということがあります。
そういった場合にも破風板があることで雨風が屋根の内部に入ってしまうことを防ぐことができるのです。
また、破風板は火災が起きた際にも役割があります。
建物が延焼して屋根裏にまで火が回っていくと建物は焼け落ちてしまうこととなります。
しかし破風板が屋根の先にあることによって、火が屋根裏にまで回るのを遅らせることができるのです。
このように破風板は雨風から建物を守る火事の際に延焼から建物を守るといった役割があるのです。

破風板のメンテナンス方法とは

破風板のメンテナンス方法にはいくつかの種類があります。
まず破風板に劣化が見られてきた場合には「塗装」するという方法があります。
塗装をすることによって防水性、耐久性を向上させるというものです。
また、劣化すると見た目が悪くなることが多いのですが、塗装することで美観も良くなります。

ただ、破風板が木材でできている場合はどうしても経年劣化が起こってきます。
木材が完全に劣化してしまうと塗装ではまかないきれなくなります。
破風板が完全に劣化してしまった場合には破風板を交換することになります。
完全に交換する際には費用も高めになるので注意しましょう。
少し劣化している程度であれば、ガルバリウム鋼板などの金属製の破風板でカバーしてしまうという板金巻きが利用できる場合があります。
ガルバリウム鋼板などでカバーすることによって耐久性、防水性、耐火性を向上させることが可能となります。

軒先について

では次に「軒先」について紹介していきます。
軒先は軒の部分の前に突き出た部位のことを指しています。

軒先の概要とは

軒先とされている部分は建物よりも外部に突き出している形になっていますので、雨や日差しを除けることができる部位となっています。
そもそも「軒」とは外壁と屋根のつなぎ目や雨戸、窓ガラスなどについて雨風から守ってくれる部分となっています。
軒の先端部分が「軒先」、下部分のバルコニーやベランダなどがある空間が「軒下」、軒部分の下の面が「軒天」となっています。

似た部位としては「庇(ひさし)」があります。
庇は外壁の出入口部分、窓のすぐ上部分についている小さな屋根のような部位を指しています。
軒は外壁全体を雨や日差しから守るものとなりますが、庇は小さい範囲を守るものとなっています。

軒先の役割とは

軒先には基本的には雨や日差しから建物を守ってくれる機能があります。
ここではそういった点について詳しく紹介していきます。

まず「外壁の保護」という機能があります。
軒先があることによって雨が直接外壁に当たらないようになるために雨水による外壁劣化を減らすことができます。
また、太陽光、紫外線によるダメージからも保護することができます。
地域や建物の大きさ、素材などによっても変わってきますが、一般的には軒は90cmほどの長さが良いとされています。

次に「雨除け、吹き込み防止機能」です。
軒先は窓の上部分にあるために、雨が降っているときに窓を開いたとしても軒先がガードしてくれるので、雨が直接建物の中に入るということがありません。
近年では外壁自体に防水加工がされていることが多いために軒先がないという家も増えてきています。
ただ、外壁自体に防水加工があったとしても軒先がなければ窓を開けると雨が吹き込んでしまうためにやはり軒先の役割は大きいと言えます。

そして「日差しの調節機能」です。
これは「ケラバ」と似たような機能となります。
太陽光が直接窓ガラスや外壁に当たると屋内も暑くなります。
しかし軒先があることによって太陽光を防ぐことができるため、屋内の温度が上昇するのを防ぐことが可能となります。
また、冬場は日照角度が低いために太陽光が窓ガラスから屋内に入るようになっています。
夏場は屋内の温度上昇を抑えて、冬場は太陽光を取り入れることができるのも軒先の役割だと言えます。

軒先にはいくつかのデメリットがある

メリットの多い軒先ですが、実際にはいくつかのデメリットもあります。
そういったデメリットを踏まえながら利用していくことが重要となっていきます。

まず軒先を付けることによって「美観の低下」というものがあります。
近年、新しく建てられている建物はシンプル、スタイリッシュ、直線的なデザインのものが多くなっており、屋根も片流れ屋根などが増えています。
そういった建物に軒先を付けることでシンプルで直線的な建物ではなくなってしまいます。
もちろん人によっての感覚は違っている部分はありますが、やはりデザインが変わってしまうということは押さえておく必要があります。

そして「建築面積に制限がかかる」という問題があります。
建築物は土地の境界線から50cm以上の距離を開けるという必要があります。
これはプライバシー保護の問題や防犯目的といった理由があります。
そのため、軒先を付けるとその分だけ外壁からさらに余裕を持って建物を建築する必要があります。
建物を小さくしなければならないということがあるので、居住スペースが狭くなってしまうという可能性があります。
居住スペースを考慮した上で軒下を設置するかどうかを考えなければいけません。

最後に「コストが増加する」ということがあります。
軒を設置する分だけ「材料費」「施工費」「人件費」などがかかってくることとなります。
メリットも多い軒ですが、設置する際には初期費用がかかってくることを押さえておく必要があります。

これらのデメリットを踏まえて軒を設置するのが難しいといった場合には、
・代わりに庇(ひさし)の設置を考える
・外壁にタイルを貼り付ける
といったことを考えるのも良いかもしれません。
庇であれば軒よりも比較的簡単に設置できます。
また、外壁にタイルを貼ることで外壁に直接雨水が当たることを防ぐことが可能となります。

まとめ
屋根には「ケラバ」「破風板」「軒先」などさまざまな部位があり、それぞれが役割を果たしています。
それらがどういった役割を果たしているのかを考えた上で設置するかどうかを考えましょう。
また、それぞれは一度設置したらずっとそのままで良いというわけではありません。
それぞれの時期を見て適切に必要なメンテナンスをしていくことが重要となっていきます。

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