「波板屋根」とは?種類と特徴について解説
屋根の形や素材は実に多様で、それぞれ独自の特性を持っています。
メリット・デメリットは屋根によって異なるため、絶対的な優劣はつけがたいものです。
大切なのは、自分のニーズに合った屋根を選択することです。
このページでは、その中でも特に「波板屋根」に焦点を当てて、詳しく解説していきます。
波板屋根の概要
「波板屋根」は「なみいたやね」と呼ばれる建材です。その波状の特徴的な形状から名付けられました。
主な用途は建物本体の屋根材としてだけでなく、ベランダやテラス、駐車場、駐輪場、物置の屋根材としても広く採用されています。
波状の形状により構造的な強度が確保され、同時に優れた排水性能も実現。雨水は波の溝に沿って自然に流れ落ちる設計となっています。
特筆すべき特徴は、その軽量性です。ベランダなどの簡易的な構造物には、瓦のような重量のある屋根材は不向きです。波板屋根は軽量でありながら十分な耐久性と強度を備えているため、理想的な選択肢となっています。
また、素材の加工のしやすさも大きな魅力です。DIY愛好家にとって扱いやすく、自作や改修プロジェクトに最適な建材といえます。
波板屋根の種類
波板屋根は主に5種類の素材から作られています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ポリカーボネート製
波板屋根の主力素材として知られるポリカーボネート。「透明性」「耐衝撃性」「耐久性」を備え、特にベランダの屋根材として重宝されています。
10年程度はメンテナンスフリーで使用でき、価格も安定しているため施工業者からの支持も厚いです。ただし、施工時には裏表の確認が必要です。
ガルバリウム鋼板製
アルミ亜鉛合金メッキを施した現代的な屋根材です。「防食性」「耐久性」「強度」に優れ、15~20年という長期使用が可能です。
遮熱性能も高く、建物内部の温度管理に貢献します。一方で、「高価格」「光を遮断する」という特性から、用途を慎重に検討する必要があります。
トタン製
亜鉛メッキを施した鉄板で、「耐衝撃性」「強度」「軽量」が特徴です。しかし、錆びやすく寿命が5~7年と短いため、現在ではガルバリウム鋼板に置き換わりつつあります。
塩化ビニル樹脂製
かつての主力素材で、手頃な価格と加工のしやすさからDIY向きです。ただし、耐候性に難があり、経年劣化で白濁やひび割れが発生します。定期的なメンテナンスができる方向けの素材といえます。
塩化ビニル樹脂製(ガラスネット入り)
ガラス繊維で補強された難燃性の素材です。通常の塩化ビニル樹脂より丈夫ですが、耐用年数は4~5年程度。高価格であることも考慮が必要です。
波板屋根の寸法、サイズ
波板屋根には様々な規格があり、用途に応じて適切なサイズを選択できます。
主力製品のポリカーボネート製品では、以下の5種類の規格が提供されています:
・鉄板小波
・鉄板大波
・スレート小波
・スレート大波
・小波広幅
これらの名称は素材を表すものではなく、規格の区分を示す呼び名として使用されています。
標準的な「鉄板小波」の寸法規格:
・全体幅:655mm(有効幅:575mm)
・波の間隔:32mm
・溝の深さ:9mm
・波の数:20.5
縦方向の長さは6尺から10尺まで、5段階で展開されています:
・6尺:1,820 mm
・7尺:2,120mm
・8尺:2,420mm
・9尺:2,730mm
・10尺:3,030mm
3~5尺のサイズは標準規格にないため、必要な場合は長尺品を裁断して対応します。
ガルバリウム鋼板製品は、縦寸法は同一ですが、横幅が異なる場合があります。
参考価格(6尺サイズ):
・ポリカーボネート:1,500円~
・ガルバリウム:2,000円~
波板屋根の留め具
波板屋根を設置する際は、適切な留め具で固定することが重要です。ここでは、主な留め具の種類と特徴を解説します。
ビス
螺旋状の溝が特徴的な固定具です。木材や金属の下地に使用され、高い固定力を発揮します。下地の材質に応じて適切な種類を選択する必要があります。
傘釘
ステンレス製の特殊な釘で、頭部に傘状の部品が付いています。この形状により雨水の侵入を防ぎ、木製下地との組み合わせで優れた防水性を実現します。
ポリカフック
ポリカーボネート素材を採用した高耐久の留め具です。フック状の先端で下地に取り付けます。アルミ製の下地に最適で、下地幅に合わせて様々なサイズから選べます。
フックボルト
金属製のL字アングル下地専用の留め具です。先端部分がフック形状になっており、確実な固定が可能です。
パイプボルト
パイプ状の下地向けに設計された留め具です。フック状の先端でパイプに固定し、安定した取り付けを実現します。
波板屋根の交換手順
波板屋根の交換作業の基本的な手順をステップごとに解説します。
1. 古い波板と留め具の撤去
最初のステップは既存の留め具を外すことです。適切な工具(ドライバーなど)を使用して、慎重に作業を進めます。
留め具の種類を確認し、それに合わせた工具を選びましょう。すべての留め具を外したら、古い波板を丁寧に取り外します。この時、下地を傷つけないよう注意が必要です。
2. 下地のクリーニング
波板を取り外した後、下地と溝の清掃を行います。長年の使用で堆積した落ち葉や埃を完全に除去します。
環境条件(近隣の植生や地域の特性など)によって、清掃の程度は異なってきます。この機会を活用して、入念な清掃を心がけましょう。
3. 新しい波板の寸法調整
規格サイズの波板を設置場所に合わせて調整します。ポリカーボネートの場合、カッターで簡単に加工できます。
専用工具を使用することで、より正確なカットが可能です。寸法は慎重に計測し、隙間が生じないよう注意を払います。
4. 新規波板の設置と固定
調整した波板を慎重に配置し、適切な留め具で固定します。下地の材質に適合する留め具を選択することが重要です。
事前に必要な留め具の種類と数量を確認しておくと、作業がスムーズに進みます。
まとめ
波板屋根は、住宅の付帯設備から産業施設まで幅広い用途で採用されている実用的な屋根材です。
現代の主流となっているポリカーボネート製品は、優れた性能と扱いやすさを両立しています。
施工が比較的容易なため、専門知識があれば自己施工も検討できる建材といえるでしょう。
<あわせて読みたい豆知識>
▷錆びたトタン屋根の修理方法は?費用を安く抑える方法や業者を選ぶコツまですべて解説
▷ガルバリウム鋼板ってどんな屋根材?特徴やメリット・デメリットを徹底解説
-
前の記事
屋根のメンテナンスは築何年が目処?メンテナンスが必要な劣化症状も解説 2023.07.01
-
次の記事
屋根の軽量化は耐震性に効果がある?耐震リフォームについて解説 2023.07.19